血研ぎの刃
【ちとぎのやいば】
膨大な犠牲を払って生み出されたもの。
リューズおよびリューズで用いられる舞剣、その踊り手であるセレンディール人という美を生み出すために払われた膨大な犠牲を悼む気持ちと、それを行った者たちへの憎悪や嫌悪を抱きながらもなお、その結果として生まれた美に対する本能的な称賛と憧れを抱いてしまうことへの自己嫌悪や道徳感情との対立に苦しむなどの、葛藤を含んだ複雑な心境が根底にある。
『狂王記』中の記述が由来。
訳注
リューズ
ラヴェニール文明時代の舞踏芸術。
常軌を逸した訓練と予算によって神懸かり的ともいえる領域に達し、観るものを魅了した。非人間的なまでに美を追求したラヴェニール文明が創り上げた、瞬見永執の美貌、人間離れした身体能力などを持つ伝説的な人種であるセレンディール人にしか踊れないため、「リューズ」と「セレンディール人」は不可分性を帯びたイメージとなっている。
この舞踊は命懸けの実戦形式となっており、美の象徴であるセレンディール人の対照として、犯罪者や奴隷、平民を敵役として出演させた。その多くはほぼ確実に死に至ったが、もし演舞中に、踊り手であるセレンディール人の身体(髪でもよい)に触れることができれば、莫大な報奨金及び身分の昇格といった栄誉、犯罪者であれば恩赦が与えられた為、志願者は後を絶たなかったというが、実際にそれを成した者はほぼ皆無であったことから、「リューズ」及び「セレンディール人」には、「死」のイメージが根底にある。
現代では人道的観点からも完全な再現はほぼ不可能であるとされているが、多くの芸術家がその再現を見果てぬ夢として追い続けており、その挑戦自体が、文学や映画、劇など、様々な作品の題材となっている。
『狂王記』
ラヴェニール文明時代に書かれた、作者不明の書。
ラヴェニール文明時代、「人間として扱われなかった人々」により、ルーレイ・ラナディーレリーやヴェルナトールをはじめとした、ラヴェニール文明時代の「狂王」たちのおぞましき所業を、絶対に歴史から無かったことにしては決してならぬという使命感のもと、命懸けで書き継がれてきた。
あまりにも凄惨な内容であるため、現代では原書の閲覧を希望する者は厳重な審査を受け、許可を得る必要がある。
類義:「リューズの憂鬱」