悲なくして美なし

【ひなくしてびなし】

美と、人間の負の側面が分かちがたく結びついていることを表した言葉。

「美の文明」と呼ばれ、その徹底した美への追究と、実際に生み出したものがあまりにも美しく、現在もなお、美の基準となっているほどの多大な影響力を持ち続けるラヴェニール文明時代だが、そのラヴェニール文明を象徴する存在であるセレンディール人やリューズ、ヴェルナトール、リューズレイ、リューレリーなどの全てに、悲劇のイメージと事実がついてまわることから。

ルウェイン文明における「ラヴェニール文明史観」に決定的影響を与え、現在でもなお、基本的なラヴェニール文明観の大部分を形成していると言われるエリル・イーレアの言葉。

出典は『忌まわしきはリューレリーならず』『リューズレイ』。

訳注

ラヴェニール文明

一般に「美の文明」と呼ばれるように、美を「絶対善」とし、非人道的なまでに美への追究を徹底したことで有名な文明。はるか古にラヴェニール文明が滅び、その後継文明となったルウェイン文明すらもセレンディール文明に飲み込まれ滅びた現代でもなお、「美の基準」はラヴェニール文明の影響が色濃く残っているほどに大きな存在感を有し続けている。

ラヴェニール文明を象徴する存在として「セレンディール人」「リューズ」がある。ラヴェニール文明が、美に関して技術的にはもはやこれ以上はほとんど成長の余地が無い、という、限界に近いところまで到達し、停滞期に入っていた時代に生まれた伝説的な王ルーレイ・ラナディーレリーにより、絵や彫刻、物語などの「作り手」側ではなく、「対象」側、つまりモデルとなるものを美しくしてゆけばよい、という恐ろしい考え(元からラヴェニール文明にはそういう傾向はあったが)が徹底的に推し進められ、これが、後のヴェルナトールとリューズレイ、そしてセレンディール人誕生へと繋がり、このヴェルナトールとリューズレイの兄妹により、リューズとセレンディール人は完成の域に達した。

ラヴェニール文明が生み出した美には、その絶対的な美しさと共に、常に死のイメージが付きまとうほど(事実、ラヴェニール文明には、死を「美」への貢献につながるものと考える思想が根底にあった。「セレンディール人」「リューズ」訳注参照)、現代の基準では人道に反する所業を連ねたにも関わらず、今なお、多くの人々を魅了し、憧憬を以て語られる文明である。

エリル・イーレア

ルウェイン文明が生んだ最高の文豪の一人。主にラヴェニール文明時代を題材とした傑作群を執筆し、ルウェイン文明の人々の「ラヴェニール文明史観」に、歴史家以上の決定的影響を与えたと言われるほどの影響力を及ぼしたとされる。

代表作は『リューズレイ』『物語の神』『美の契約』『ルウェイン』など。

「レナティス」三部作などで知られるエリーレル・リュールディや、『一夜限りの音』『セレンディール』などで知られる、シーレア・レルークなどは、エリル・イーレアから「多大な影響」を受けたと公言していた。

エリル・イーレア作品の中でも最も人気の高い『リューズレイ』は、ヴァリド・イルーディス(映画監督)やルーゼル・イーリー(旋律画家)を始め、映画や旋律画、絵画作品など、他の分野の偉大な芸術家たちにも愛され、新たな多くの傑作を生み出す源となっている。

エリル・イーレアの名を冠した「エリル・イーレア文学院」がラヴェニール教によって創立・運営されており、同学院は、「ルドルーズ文学院」と並んで、文学系教育・研究機関の最高峰として世界的によく知られている。