狂選香
【きょうせんこう】
① リューレリー(花)の呼称
② セレンディール人の呼称
③ 理性を失わせるほどの魅力。
④ 精神性(人間性)よりも肉体的な魅力(容姿)を激しく求めること。
⑤ 他の全てを犠牲にしてでもそれを得たい、という渇望のもとになるもの。
訳注
リューレリー
最も美しく、最も美しい(良い)香りを持つとされる花。その香りには危険なほどに強い依存性がある。
美貌、若さを得られる代わりに精神を狂わされるという、神話的な、現実に存在することが信じられないような超自然的なものすらを感じさせる信じがたい性質を持つがゆえに、精神が狂うと知っていながら、美の為に過剰摂取したり、更に忌まわしいことには、他者、それもおぞましいことに、自分の娘や妻に無理矢理、摂取させる者すら多く、他者に強制摂取させられずとも、自らの容姿に劣等感を持っていたり、また、自信があっても、より美しくなりたい、と考える人々もまた、精神の崩壊を知っていてなお、この花を求めた。
こういった忌まわしい歴史があるために、リューレリーは「狂花」「生贄花」「想い殺し」「欲曝し」「継承花」「狂選香」など、その美しさとは裏腹に、様々な名で呼ばれ、非常に多くの神話や伝説、文学に登場する。
「生贄花」「狂花」などの恐ろしい呼び名をつけられたり、神話や文学、演劇などの物語では悲劇の象徴として扱われたりしてきたが、「忌まわしい」のはリューレリーなのか?それを利用する人間が忌まわしいだけではないのか、と考える人も勿論、昔からいた。「忌まわしきはリューレリーならず」という言葉は、それをあらわしており、古代から世界中に言い回しは異なるが内容はおおむね同じものが多数ある。
なお、「美の文明」と呼ばれるラヴェニール文明では、リューレリーを使うことが常套となっていた。「狂気の文明」とも呼ばれる所以である。その結果、膨大な時間と犠牲の果てに、ラヴェニール文明が生み出した最高傑作がセレンディール人、あの神懸かり的な美しさで多くの人々を魅惑し、破滅させてきた少女たちである。
セレンディール人
ラヴェニール文明が「美の追究」の為に創り上げた、瞬見永執の美貌、人間離れした身体能力などを持つ伝説的な人種。
要求される能力基準の異常な高さゆえに、セレンディール人にしか踊れないラヴェニール文明時代の舞踏芸術であるリューズは、常軌を逸した訓練と予算によって神懸かり的な技芸の域に達し、観るものを悉く魅了した。
この舞踊は命懸けの実戦形式となっており、美の象徴であるセレンディール人の対照として、犯罪者や奴隷、平民を敵役として出演させた。その多くはほぼ確実に死に至ったが、もし演舞中に、セレンディール人の髪に触れることができれば、莫大な報奨金及び身分の昇格といった栄誉、犯罪者であれば恩赦が与えられた為、志願者は後を絶たなかったというが、実際にそれを成した者はほぼ皆無であったことから、「リューズ」及び「セレンディール人」には、「死」のイメージが根底にある。