夕移しの刃
【ゆううつしのやいば】
美が、その奥にある恐ろしいものから目をそらせてしまうことのたとえ。
「夕移し」は、ラヴェニール文明時代の舞踏「リューズ」で用いられる美しい剣である舞剣の中でも、レナティスの愛剣として特に有名なもののひとつ。多くの人命を奪った恐ろしい剣でありながらも、あまりの美しさに見る者を魅了し、その恐ろしさを忘れさせてしまう(あるいは気に留めさせなくなる)、の意から。
訳注
リューズ
ラヴェニール文明時代の舞踏芸術。
常軌を逸した訓練と予算によって神懸かり的ともいえる領域に達し、観るものを魅了した。非人間的なまでに美を追求したラヴェニール文明が創り上げた、瞬見永執の美貌、人間離れした身体能力などを持つ伝説的な人種であるセレンディール人にしか踊れないため、「リューズ」と「セレンディール人」は不可分性を帯びたイメージとなっている。
この舞踊は命懸けの実戦形式となっており、美の象徴であるセレンディール人の対照として、犯罪者や奴隷、平民を敵役として出演させた。その多くはほぼ確実に死に至ったが、もし演舞中に、踊り手であるセレンディール人の身体(髪でもよい)に触れることができれば、莫大な報奨金及び身分の昇格といった栄誉、犯罪者であれば恩赦が与えられた為、志願者は後を絶たなかったというが、実際にそれを成した者はほぼ皆無であったことから、「リューズ」及び「セレンディール人」には、「死」のイメージが根底にある。
現代では人道的観点からも完全な再現はほぼ不可能であるとされているが、多くの芸術家がその再現を見果てぬ夢として追い続けており、その挑戦自体が、文学や映画、劇など、様々な作品の題材となっている。